夏休みに入ったからか、病院の待合室に、小中学生と思しき子どもたちが増えてきた。
今日は、図書室のナンバータグがついた本を、開いている女の子がいる。
順番が来て、呼ばれた。
彼女は、隣に座っていた母親に、開いたままの本を預けた。
受け取ったお母さんは、読みかけのページに指を挟んで、待っていた。
診察から戻ってきた女の子は、そのまま差し出された本を、ついと開き、
何事もなかったように、続きから読み始めたのである。
私は感動する。
なんて素敵な光景だろう。
栞がない状態で、読みかけた本を、迷わず差し出す娘。
ページがわからなくならないように、指を挟んだまま預かる母。
再び受け取って、すうっと物語に戻る娘。
同じ本を読む身としては、その母の気遣いや、
子どもが本の世界に出入りする姿や、
読書を遮らない、絶妙な親子の距離感が、とても素晴らしいものだと思った。
目の前の光景に、心を温めながら、再び自分の本に目を落とす。
本は、いいなあ。