タイム・リープ あしたはきのう(高畑京一郎)

『クリス・クロス』に引き続き、高畑京一郎さん・再読です。

【タイム・リープ あしたはきのう(高畑京一郎)】

これも、高校時代に、大好きだった1冊。

「すごい」と唸る物語は、数あれど、

“タイムリープ”理論に、思わず唸った、青春小説でした。

本格的な理論が仕込まれたライトノベルを、読んだのが初めてだったので、

「こんなラノベがあるんだ…!」と歓喜した作品です。

同じ年代の読者の中には、これを機に、SF小説に興味を持った人も、いるんじゃないだろうか。

とはいえ、私の思考回路は、主人公の翔香に近いので。

“入り組んだ因果の網を的確に解きほぐして”いき、

“明快極まりなく”思考を組み立て、一分の隙もなくぴたりと合致させていく、

若松くんの知的な手腕には、ただただ感心するばかり。

洗練されたパズルのような、美しささえ感じます。

絡まった謎が、するりと解けてゆくおもしろさ。

時間を再構成させてはならない緊張感。

そこに、青春小説らしい人間模様が入ってくるから、

高校生にとっては、感情移入も容易くて。

今まではファンタジーでしかなかった“時間移動”の、理論的な面が、ぐっと身近になりました。

大人になって、改めて読むと、すごい理論構築だと思いましたし。

若松くんの可愛げと男気も、当時より、よくわかります!

取りこぼしが一切ない、美しく構築された時間の物語。

「おわりははじまり」で、「はじまりがおわり」

だから、読み終えたあと、もう一度、最初のページを開きたくなります。

デビュー作の『クリス・クロス』は、本を閉じたままで、余韻を味わいたい読後感。

こちらの『タイム・リープ』は、読者も再び、違う視点で物語を追いたくなる読後感。

どちらも甲乙つけがたく、好きです!

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