きみの町で(重松清)

比嘉教子 ひがっちさんに、昨年の神保町旅で、リアル選書してもらった本。

【きみの町で(重松清)】

「親目線なら、こちら」と、オススメしていただきました!

重松清さんは、10代に読んだ『ナイフ』と『エイジ』が、当事者年代にはしんどくて、

あまり読んでこなかった作家さんです。

でも、大人になってから少しずつ、

描くものはリアルで、鋭く抉られる気持ちになっても、根っこに流れるものは、やさしいんだな。

ってわかってきました。

“お話の中身はそれぞれ違っていても、根っこにあるのは、いつも同じ

――「不自由」もあんがい気持ちいいものだよ、ということばかり書いてるんだな”

と、作中にあったように。

“生きることを嫌いにならないで”

重松さんは、そう言います。

ひとつひとつのお話には、心がぎゅうっと苦しくなる葛藤があって、

大人になって、解決したのか。受け入れたのか。見ないふりをしているのか。

否応なしに、直視しなければならない矛盾もある。

でも、誰もがそうして生きているんだな、と思う。

わが子が悩んでいたらと想像するだけで、胸が痛むけれど。

そんなふうに物事を考えて、生きていることは、とても尊いと思う。

抉られるし、揺さぶられるし、打ちのめされるし、

ままならない感情を抱える読書で、めちゃくちゃ不自由なのだけど。

どの物語にも、不思議と、孤独を感じることがないのです。

誰もが“まっすぐに考えている”のだろうな、と感じるからかな。

うん。生きることを、嫌いにならないよ。

もう子どもではない私も、重松さんに、そうお返事したくなりました。

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