【エッセイ】今日を生きる

今年の夏は、あんなに暑かったのに。
気づけばすっかり冬になろうとしている。

秋はどこに行ったのだろう。
ここ数年、秋の服というものを、まったく着ていない気がする。

季節を問いたくなる私をよそに、
山の木々は粛々と色づき、葉を散らす。

自然は、季節をよく知っているなあと思う。
その瞬間の気候や気温の変化に、美しく応じてゆく。

「季節外れの暑さで/寒さで」
と人間が戸惑っている環境で、適した季節に適した移ろいを、毎年続ける。

「今は○月だから」
「春だから/夏だから/秋だから/冬だから」
で暮らしを判断している私が、やけに頭でっかちに思えた朝。

人間の、暦と四季の感性は、大好きだけれど。
いずれは、夏の風物詩が冬まで続いたり、
冬の歌が似合う春が訪れたり、するのかもしれない。

今年最後の月になった。
山の色が、また一段と深くなる。

そのときが来れば、迷いなく葉を落とす木々のように、
私は今日を生きられるだろうか。

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