この短編は、タイトルがもう、反則だと思う…!
知らない単語は何ひとつないのに、ちょっと何を言っているのかわからない感じが。
手に取ってしまうじゃないか。
村上春樹さんは、短編のほうが読みやすくて好き。
そして今回のは、ピクチャーブックです!

彼の文章は、絵画のような自由さと彩りがある、と思っています。
現実に起きている事実だけを抜き出したら、一文で終わるような物事すらある。
なのだけれど、村上春樹というフィルターを通ると、唯一無二の美術品になるのだよなあ…と。
その世界観の構築に、感嘆する作家さん。
だから、ピクチャーブックにするって、すごく難しいのではないかと思う一方で、
だけどとても相性がよさそうだな。と、わくわくしました。
文章はわかりやすいのに、物語には不思議な難解さが流れている、村上春樹さんの世界。
自分の内側の感覚に、深く潜って読んでしまうんですよね。
それが、ビジュアルを持つと、こんなに鮮明に伝わるんだなあ。
外に向かって、開いていくようで。
イラストレーターの高妍さんもまた、すごい世界観の持ち主なのだと思いました。
絵本みたいになった村上春樹の本、好きかもしれない。
ちなみに、表題作ともうひとつ、『鏡』という短編も収録されているのですが、
五感で文章を書きたいという人は、読んでみると楽しいかもしれない。
体じゅうをリアルに這う音や温度が伝わる文章を、感じられるのではないかなあ。