暮らしを、足し算ではなく引き算で捉えてみること。
最初に読んだのは、わたなべぽんさんの本でした。
それから、たくさんの人の「やめてみたこと」に触れてみて、試してみて。
少しずつ、自分なりのスタイルができてきたように思います。
今までは、学校に仕事に育児にと、目の前のことに必死の人生で、ゴールだと思っていた年齢や環境にたどり着いても、まだ答えがわからないことに驚いていたけれど。
最近ようやく、「人生ってそういうものなんだ」とわかって、10代の頃とは違った意味で、自分の未来を考えられるようになりました。
そのためか、自分より年上の人たちの生き方や暮らしぶりに、興味を惹かれます。
ささやかな名言の宝庫
一田さんがやめてみた、ひとつひとつのことは、小さなステップなんです。
例えば、「反省をやめる」「高級下着をやめる」「おかずを1品作るのをやめる」「リネン生活をやめる」などなど。
でも、ひとつの物事をやめた過程と、その結果得られた暮らしだけでなく、さらにその先の一歩分まで、書いてくれているのが素敵なところ。
それは、心の持ち方であったり、ほかの分野への向き合い方であったり。
すべてが、生き方や価値観へと繋がっていく、エッセイの見本みたいな文章だなあ、と思いながら読みました。
途中に、一田さんがエッセイを出そうとして難航し、一旦お蔵入りになった、というエピソードがありました。
「自分の中で一度噛み砕き、自分の文章としてアウトプットする」ことができなかったからだそうなのですが…。
だとすれば、この本はまさに、一田さん自身の言葉としてアウトプットされているんですね。
「おおーっ!」と衝撃を受ける感じではないのですが、しみじみと「なるほど」が満ちてくる1冊です。
このあたりが、歳を重ねた人にしか出せない深みなのかもしれません。
「人生の折り返し地点」
「新しい調味料を買うのをやめる→自分の『経験』というリストの中から『できること』を探してみる」という項目の中に、書かれていたこと。
ものをたくさん買って、使ってみて、自分の体を通して世界を知るという時期があります。
逆にいらないものを手放して、自分が本当に必要なものだけで暮らしたくなる時期がやってきます。
(中略)
インプットする時期から、自分の中にあるものを「使って」楽しむ時期へ。
それが意識せずとも自然にやってくる「人生の折り返し地点」というものだったのかなあと感じています。
この感覚は、まさに今の私と同じ。
どこかでやってくる、この地点は、生まれてから今までの道をふり返り、またこれから死ぬまでの道を見つめる場所ではないかと思います。
一田さんの場合は、それが50歳前後だったそう。
50歳からの彼女が、とても楽しそうなので、私も50代以降が期待大になりました。