【読書スポンサー様】泣く大人(江國香織)

今回の読書スポンサー様は、

アーティスト・ ささぶち ひろみ さんです。

独特の世界観で綴られた、写真や文章は、鮮やかで切なくて、

ひとさじの哀しみが混ざった、美しいあたたかさを、私にくれます。

ひろみさんが贈ってくださったのは、

【泣く大人(江國香織)】

前回の『泣かない子供』と、対をなすエッセイ集です。

江國香織さんの文章であることに、かわりはないのだけれど、印象がまったくちがうのに驚きました。

『泣かない子供』は、しんと静かな秋の夜ふけに、

とろりとした甘いシロップを喉に落としたような、ひそやかさ。

『泣く大人』は、春のうららかな昼さがり、

シーツにくるまって、日差しと風を贅沢に貪るような、開放感。

どちらにも、子どもの頃のこと、大人になってからのこと、両方書かれています。

歯のことや、本『プラテーロとわたし』、永瀬清子さんの詩など、共通の話題もあります。

読書日記も、同じようにあるのに、不思議と印象は真逆だったのです。

読む前は、

無垢で自由な子どもが選ぶ“泣かない”と、

瑕疵で不自由な大人が選ぶ“泣く”だと思っていたのですが。

実際に読んだら、

不自由だからこそ、大人になる過程の涙を、心の小瓶にそっとためた“泣かない子供”と、

自由だからこそ、おおいに笑い、嘆き、いろいろの涙を浴びるように味わう“泣く大人”。

まさに、表紙のおさるさんみたいに。

そんな、二冊のエッセイでした。

読んでみて、心底思うのは、

江國香織さんは、ひらがなの使いかたが、とてもうつくしいということ。

「ちがう」「こがれる」「おなじくらい」

「ひと」「なかに」「ひらく」「すてる」

どれも、私がさらりと書いたら、漢字に変換されるものばかり。

この、やわらかに包みこむ、ひらがなの言葉と、

「対峙」「覚束無い」「耽溺」「燐光」

「滑稽」「盲信」「躊躇」「逡巡」「俄然」「我儘」

といった、がっしりと張りつめた、漢字表記とのバランスが、

とても気持ちよく、私の体を流れていきます。

フルーツを浮かべたミネラルウォーターみたいな、贅沢な読書でした。

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