こちらも、電撃文庫で名前を知った作家さん。
読むのはこれが初めてです。
死んだ加地くんを、忘れるでも乗り越えるでもない奈緒子と巧の恋愛は、みずみずしい生命力を感じました。
あえて言葉にするなら、「幸せな人生を歩む自身の心の中に、あり続けている」。
本当の意味での、痛みとの共存のような。
流れていく時間の中で、生き続ける確かなもの。
それは昔、私が描きたいと願っていたものと同じでした。
大切な人の死から立ち上がり、再び人生を歩き始める物語が、星とともに鮮やかに広がります。
何より、ふたりの恋愛模様を際立たせているのは、周囲の人々。
山崎先輩や瑞穂さんや絵里、それぞれに魅力あふれるキャラクターなのですが。
個人的には、家出してきたお父さんがいちばん好きです(笑)。
年齢も性別も違うのに、なぜか親近感が湧く人物。
10代の頃は、主人公に共感することが多かったけれど、歳を重ねるごとに、脇役や敵役の魅力がわかってきた気がします。
透き通る水のような、さらりとした読後感が心地よかったので、ほかの作品も読んでみたいです。