成長しての巣立ちではなく、我が子と離れなければならないということは、文字通り、身も心も引き裂かれるような。
生みの親ではないけれど、2歳までを共に過ごす、作中の「マザー」の思いが、母となった自分と重なりました。
ひとつひとつの場面が、ゆっくり心に沈み込んでくる物語です。
乳児院の子どもたちに、人生の土台となる絶対的な安心感を注ぐ保育士と。
その上に生き抜いていく子どもと。
親ではないけれど「自分のルーツ」なんですよね。
温子が多喜を守ろうとするところ、多喜が自分の土台の記憶を埋めていくところ。
根っこがあるから、人は立っていられるんだな、と思いました。
私は、子どもたちに、ちゃんと人生の基盤を作ることができたかな。
たとえ自分が覚えていなくても、幸せを祈ってくれている誰かがいる。
自分は愛されていて、この世に存在してもいいのだと。
子どもたちに、そう感じてもらえる「母親」を、全うしたいです。