高校時代、大好きだった小説の再読です。
【クリス・クロス 混沌の魔王(高畑京一郎)】
第1回電撃ゲーム小説大賞で、金賞を受賞した作品。
「ヴァーチャルRPGノベル」といわれるこちらは、仮想現実世界を舞台に、RPGをプレイする物語です。
――と聞くと、楽しそうな冒険活劇だと思いませんか?
そう信じて読み始めた、高校時代の私には、衝撃に次ぐ衝撃の展開でした。
ぐいぐいと惹き込まれて、読んでしまった。
いま約20年の時を経て、再び開いた『クリス・クロス』は、色褪せず、やっぱり同じように惹き込まれる物語。
RPGのわくわくする気持ちから、一転して謎と恐怖、そこからの立ち上がり。
王道の感情曲線に、とんでもない展開をのせてきた。
というのが、素直な感想です。
最終章の『幻影の呪縛』の、前半を脱するところの緊張感が、好き。
ラストの、自分自身の現実とも繋がるかのような、思わず確かめたくなってしまう終わり方も、好き。
すべてが終わってみれば、気持ちよいわかりやすさで、伏線が張りめぐらされていて、
すべてが、小気味よく回収されているのが、好き。この物語が、当時、小説家になりたい私たちの憧れのひとつだった、電撃大賞受賞作、
かつ高畑京一郎さんのデビュー作である。ということに、感動します。
デビュー作で、素晴らしい物語にめぐりあうと、
「これを書いてくれて、応募してくれて、ありがとう!」
「これを見つけてくれて、出版してくれて、ありがとう!」
本好きとしては、奇跡的な出会いに、感無量になるのです。
40代で読んでも、おもしろかった。幸せでした。
『クリス・クロス』と縁を繋いだ、10代の私に、感謝しようと思います。