教室に並んだ背表紙(相沢沙呼)

「図書室が舞台の、連作短編集」という紹介文だけで、絶対に手に取ってしまう。

そのくらいには、私は本と図書室を愛した子どもでした。

読み始めは、語り口調に流行語が入っていて、ちょっとなじみづらいな…と思ったのですが。

物語が進むにつれて、その言葉遣いが、逆に個性としてすんなり入ってきます。

少しずつ繋がっている物語の、あのときあの子はこうだったのか! というわくわく感あり。

「しおり先生」の正体の、謎かけみたいなところは、思わず笑ってしまうぐらいの楽しさあり。

ゆっくり味わって、大切に読みたくなる1冊でした。

どの子にも、本人や近しい人やただのクラスメイトという立ち位置によって、違う姿が見えているのがおもしろいんです。

考えてみれば、ひとりひとり違う人間だから当然なのですが。

やっぱり私も、自分の価値観だけで「この子はこのグループだから」「こういう種類の人間だから」って勝手なカテゴリーに押し込めていた覚えがあります。

でも、ときどき交流したキラキラグループの子たちも、ひとりひとりと向き合ってみれば、必ずしも苦手な相手ばかりではないのだと感じたことも、確かにあったし。

学校ほど色に溢れた「書架」は、大人になってからはそうそうないから。

もっとたくさんの「背表紙」に、手を伸ばしてみたらよかったな。

「普通じゃない」ことや敏感さに悩み苦しむ少女たちのストーリーを追いながら、こういう気持ちがわかって、丁寧に掬い上げてくれる作家さんがいて、嬉しいなと思いました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする