興味はあるけれど、読んだら際限なく沈み込みそうな気がしたので、あえて明るいカフェで開きました。
読んでみて、結果的にすごくよかった。
世界の絶対的貧困と、日本の相対的貧困の歴史や背景、貧困が生む社会問題。
それらは決して単純な問題ではありませんが、はじめに「17歳の君たちへ」とあるように、1冊を通してわかりやすく語りかけてくれています。
貧困の実情は確かに、絶望したくなるものでした。
そこに生きる子どもたちを想像するだけで、心がぎゅっと引きちぎられるような。
けれど、貧困の深みに溺れてしまった事例と、這い上がり脱出した事例と、両方が綴られているのがいいところです。
環境やサポートによって、生きる力を育むことができるのだとわかるだけでも、救いがあります。
貧困の方程式
著者は、貧困家庭にあっても、うまくいく子といかない子の違いを、方程式にしています。
【うまくいく子】
周りのサポート(愛情、友情、支援)×本人の行動力=自己肯定感【うまくいかない子】
環境の悪さ(虐待、差別、いじめ)×劣等感(絶望、あきらめ)=自己否定感
そして、
自己否定感=心のガン
勉強、仕事、友人関係が投げやりになり、人生を破壊する
のだと。
貧困家庭に限らず、自己肯定感があれば、人は困難を乗り越えてまっすぐに生きてゆける。
逆に自信をなくしてしまったら、困難に追いつめられて真っ当な考え方ができなくなる。
そのことを、実例とともに教えてくれます。
学校に行けなくなったときの長女は、まさに「うまくいかない方程式」そのもので、身近に感じられることでした。
親子ともに、いろんな人から・場所からの支援を受けて、今では「うまくいく方程式」の歩みを見せてくれています。
貧困ではなかったけれど、身をもって方程式を理解できた、貴重な経験です。
私にできること
「格差を越えて、未来をつくる」ために、石井さんが教えてくれたのは、「地域支援」という方法です。
国が法律や制度を整えて公的な支援をし、それだけでは行き届かない私的な支援を民間がやる。
子どもたちひとりひとりに向き合って、自己肯定感を築き上げるNPO活動は、子供食堂や無料塾が有名ですが。
ほかにも、施設のショートステイや病院、シングル家庭支援など、地域のさまざまなセーフティネットで支えていく形です。
個人も未成年も例外なく、地域の一員として、
日常のごくささやかなことで手を差し伸べるだけで十分なんだ。
挨拶をする、愚痴を聞いてあげる、笑顔で接する、気をつかってあげる……。本当に困っている人たちは、それだけですごく救われた気持ちになるものだ。
君たち未成年だって地域住民の一員であることを忘れないでほしい。
困っている子供が学童保育へ通ったり、お祭りへ行ったりして出会うのは、その地域の子供たちだよね。つまり、君たちだ。
この時、君たちが温かい言葉をかけて友達の輪に入れてあげれば、その子は一日中ずっと笑顔ですごすことができる。そして、それが生きる上での支えになる。
特別な能力やお金がなくても、できることがある。
その事実は、社会をよりよく変え、未来に向かうエネルギーをくれます。
物理的な豊かさから、心の豊かさを求める時代へと変わってきている現在、低収入と貧困とは同義ではありません。
「心の豊かさ」という幸せを手に入れるためには、健全な心が必要で。
そのために「自己肯定感」が大切なのだと、1冊を通して、道を示してもらいました。