最初にこの概念を聞いたとき、私は言語思考者だろうな、と思いました。
「絵」で考える。と言われて想像したのは、
小説を読みながら、詳細でリアルな情景を、頭の中に描くようなこと。
【ビジュアル・シンカーの脳 「絵」で考える人々の世界(テンプル・グランディン)】

読んでみて、その認識が、まったく違っていたことに気がつきました。
「読んで描く」というのは、そもそも言語ありきの思考なんですよね。
絵で考えるというのは、文字どおり「絵」です。
そこに言葉は必要なかった。
絵を、絵として理解するような感覚は想像できても、
著者の頭の中の、常に増え続ける視覚ファイルの画像と、それらがリンクしていくさまは、想像を超えていた。
最初のほうに、視覚思考タイプか言語思考タイプかの、判定テストが載っていました。
18個の質問に「はい」「いいえ」で答えていき、
「はい」が10個以上なら、視覚思考である可能性が高いとのこと。
とはいえ、どちらか一方に当てはまるのではなく、
”言語優位から視覚優位までのどこかに当てはまる”。
たいていの人は”二種類の思考の混合タイプになる”。
言われてみればそのとおりだよね、と納得。
子どもが発達検査を受けたときのことを思い出しました。
それぞれにグラデーションがあったな、そもそも人間ってそういうものだったな、と。
で、私は「はい」が7個。
やや言語寄りの、混合タイプみたいですね。
言語思考者と、物体視覚思考者と、空間視覚思考者の見ている世界が、
読み進めるほどに、おそろしく違うのだと知ることができます。
自分以外の物事の考え方は、どこまでいっても想像するしかできなくて。
なので、知るのがおもしろい。
視覚思考について引用されていた文献のひとつに、
”設計者は製図用紙に線を引き、頭に思い浮かべた図と置き換え、
ここから頭の別の場所で似たような図が生まれ、最後に図は三次元の金属製のエンジンになる。
これはおもに設計者の非言語的思考と非言語的推論に基づいて行われ、設計者は図で考える”
というのがあって、私にはまったくない感覚で、驚きました。
物体視覚思考者の、危険が”見える”という項目では、
災害や事故の実例をもとに、実際に脳内でどのような思考が展開されているのかを、垣間見ることができます。
これは素晴らしい、そして世界に必要な才能なのだなと。
”視覚思考を理解するうえで最大の妨げになるのは、その存在を知らないこと”
と書かれているように、視覚思考に限った話ではなく、すべての物事においてそうなのだと実感します。
私にはない世界が、少しだけ見えた一冊。