日がな一日、響き渡っていた蝉の大合唱が、少しずつ途切れ始めた。
心なしか声も小さくなってきたようだ。
夏が、もうすぐ終わる。
徐々に声を落とす蝉たちのように、気分がゆるやかに変化してゆく。
夏の終わりは、気怠い。
暑さにまみれた体から、夏の成分が、レモンを絞るように、一滴残らず流れ出ていく。
絞りきったら、きっと私の体は、爽やかにからっぽになり、
次は、秋の深みを存分に吸い込めるようになる。
秋の終わりには、風に舞い散るように、
冬の終わりには、雪が溶け出すように、
春の終わりには、花びらが落ちるように、
季節の成分が、私の内側から出てゆき、体が新しい季節を迎える支度をする。
気分の移ろいで、季節の変わり目を知るのか。
季節の移ろいで、気分が変わってゆくのか。
どちらが先なのだろう。
体と心が、季節とともに動くたび、人間も自然の一部なのだなあ、と思う。