日舞のお稽古に励む長女ですが、やはり何事にも「波」はあるようで。
コンディションがよく、素晴らしい踊りを見せるときと、調子が悪くて、まったく動きにキレのないときがあります。
先日は「何か、突然頭が真っ白になって、振りが飛びそう…」と言っていました。
その感じ、私にも覚えがあります。
演劇の舞台
私は高校時代、演劇部に所属していました。
台本をひたすら読み込んで、台詞を頭に、動きを体に叩き込みます。
そうして覚えて、順調にお芝居が進むようになったある日突然、その感覚に襲われるのです。
丸々1冊分の台本を、いったい自分はどうやって覚えていたのか?
これから先、本番まで、きちんと演技を続けられるのか?
今にも台詞のすべてが飛んでしまうのではないかという、足元からグラグラ揺れる不安を抱えたまま、それでも練習を続けていき。
そうしてまた、ある日突然に、演じるべきお芝居を、本当に理解するのです。
自分が演じる役柄が、滝のように音を立てて流れ込み、あふれ出していきます。
キャラクターと自分とが、まったくのひとつになり、台本に書かれていない部分まで、心から役柄を理解する瞬間です。
それからは、そのお芝居は自分のものとなり、足元がぐらつくような不安は、二度と襲ってはきません。
ただ、あたり前に自分の中にあるものを、表現していくだけ。
まるで天啓のような
何本かお芝居を上演させてもらえる機会がありましたが、あの感覚を味わったのは、最後の1回だけでした。
もともと下手くそだった私が、外から見て、演技が上達していたかどうかはわかりません。
ただ、自分の内側で、爆発的に何かが変わる瞬間があるのだと。
それは、ひたすら練習を積んで初めて、体験できることなのだと。
役が「自分のもの」になったのだということだけは、はっきり確信できました。
…私は日舞の経験はないけれど。
きっと娘にも、踊りが「自分のもの」になる瞬間が来るはずです。
頑張れ、長女。