世の中に、無意味な線というものは、ないのではないか。
障子戸の格子を見ながら、思う。
一本でも欠けたら、なんとも締まりのない、不安げな障子になってしまう。
たとえば、絵画を思う。
そのカンヴァスに描かれた線は、すべてが必然に作品であって、
無意味な線など、やはりひとつもないはずだ。
こうして書いている文字を構成する線でさえ、
一本増えたり減ったりするだけで、支障をきたす。
線という存在が、愛おしくなってくる。
この暖かな毛布に入っている縦縞模様も、マフラーのしおれたフリンジも。
ノート一面に広がる規則的な罫線も、私と私ではないものの境目にある体のラインも。
線は、わたしに世界のかたちを見せてくれるのだ。
真っ白なノートに、一本の髪の毛が、はらりと落ちた。
黒みがかった、やたらに濃く見える、細い曲線。
書くのに邪魔だったので、ぽいとつまんで捨てた。
迷いなく、捨てた。
これも…無意味、ではないというのなら。
私はその髪の毛を、どうするのが正解だったのだろうか。
どうしても気持ちのよい答えが思いつかなかったので、
今日は考えるのをやめることにした。
また明日。
