中学校の役員の当番で、登校時の街頭指導に立ちました。
登校してくる子どもたちに「おはようございまーす」と声をかけ続ける仕事です。
はきはきとよく通る声で挨拶を返してくれる子、目を合わせてぺこりと頭を下げていく子、いろいろでしたが。
その中に、睨むようにこちらに視線を投げて、ふっとそらした男の子がいました。
私より背も高くて、「おはようございまーす」と言いながらも、思わず気圧されてしまう雰囲気です。
自分が同年代だったら、ものすごく怖い生徒に見えただろうな、と思います。
だけど彼は、目をそらしたまま、小さく「…す」と呟いて通り過ぎました。
――ちゃんと、返してくれた。
鋭い視線は、反抗心からか、恥ずかしさからくるものかはわからないけれど。
それでも、「おはようございます」と、口の中で挨拶してくれたんです。
勝手にびくびくしてしまった自分が、とても恥ずかしくなりました。
私が昔、想像の中で怯えていたような、ちょっと目が合っただけで因縁をつけてくるような子どもは、いませんでした。
小学生の頃は、わざと悪態をついて通り過ぎていた子も、ちらっと顔を見て、黙って歩いていきます。
ああ、みんな我が子と同じで、それぞれに成長してるんだなあ。
私の知らない事情や感情を抱えながら、みんな頑張って毎日学校に行ってるんだよなあ…と思ったら、ふいに涙がこみ上げてきました。
子どもたちを見守りたいおじさんおばさん世代は、こうして生まれてくるに違いありません。
自分が10代のときには、関わるのが煩わしいと感じていたけれど。
きっと、こんな気持ちだったんだろうな、とわかりました。