雨の日の空想

湿気を帯びた朝。

新緑の山の中腹と頂きが、白い靄に覆われていました。

今にも山をすべて隠してしまいそう。

実はこの山、だいだらぼっちみたいな巨人がうずくまっていて、姿が隠れると動き出すのかもしれない。

靄が晴れたら、山がまるっとひとつ、影も形もなくなっていたりして。

そういえば、私の通っていた小学校の近くに、スリッパの形をした山がありました。

みんな「スリッパ山」と呼んでいて、本当の名前もあったはずだけれど、もう思い出せません。

きっと、だいだらぼっちのスリッパだったんだな(笑)。

やがて雨が降り始めて、地面が濡れていきます。

アスファルトにぽつぽつと広がる黒いしみ。

停めていた車の下だけ乾いていて、やがてそこも雨に染まっていくのを眺めていました。

雨の日にときどき見るぽっかりと乾いた空間は、ついさっきまで何かがいた場所。

だいだらぼっちがうずくまっていた場所も、きっとまだ乾いているのだろうな。

雨粒を受ける海面には、細かい無数の波紋が浮かんでいます。

雨だって、もしかしたら、空の上で巨人がぶるぶると体の水滴を振り払っているのかもしれないし。

傘のように広がるドレスを着た妖精たちが、くるくる舞い踊って、ぱらぱらと雨粒を落としているのかもしれない。

打ち寄せる波も、どこか遠くの海の向こうで、巨人が立ち上がったせいかもしれない。

湿ったお天気が続いたからでしょうか。

人の気配のない夜、濃い霧の向こう、ぬらぬらと空気を揺らしながら立ち上がる、たくさんのだいだらぼっちの姿が、やけに頭に浮かぶのでした。

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