辻村深月さんのエッセイ集『図書室で暮らしたい』を読んだ。
描かれている出来事の半分ぐらいは、私のそばにもあるはずの、日常の何気ない風景なのに、
辻村深月さんの目を通した瞬間に、きらきらした特別なもののように感じられる。
これがきっと、プロのプロたる所以なのだろう。
同じ本好きとして、図書室で暮らすのも悪くはないけれど、私はどちらかというと、本屋さんで暮らしたいと思っている。
小さな町の書店ではなく、たとえば新宿紀伊國屋のような、ビルごとまるっと埋め尽くす、大きな書店。
その最上階に、居住フロアを作って、暮らしたいのだ。
仕事を終えたら、好きなフロアをめぐりながら帰宅する。
休日には、上から下までくまなく散策し、書店員さんが丹精込めて陳列してくださった本棚を、お花畑のように愛でる。
訪れている人たちが何を手にとっているのか横目で見ながら「あっ、私の好きな本だ!」などとほくそ笑む。
くたびれたら何冊か買って家に帰り、くつろいで本を開く。
本好きの居住者同士で語らえる、サロンのような場所も欲しい。
まるで大きな本棚を持っているような暮らし。
そう、私は、本を愛する人たちの手によって作られた、大きな本棚をシェアして暮らしたいのだ。
今のところ、それにいちばん近いのは、ブックホテルになるのだろうか。
いつか必ず、1週間以上の空白を確保して、泊まりに行こうと考えている。