【noteエッセイ】やさしい世界

私はたぶん、本当に「死のう」と思ったことがない。

「もう死にたい」「いっそ死んでしまいたい」

思春期の頃、確かに思ったことはあるけれど、それは一種の比喩であり。

本当のところは、

「死にたいほど苦しいから、助けてほしい」

だったのじゃないだろうか。

死に向かうふりはしてみたが、積極的に向かっては行かなかった。

誰かに助けてほしかったし、誰かが助けてくれると思っていた。

昔の私は、何事かがあるたびに、環境のせいや、周りの人のせいにしてきた。

と同時に、何事もないときは、おそろしく純粋に、周囲に頼りきっていたのかもしれない。

「助けてくれる誰か」の存在を、疑うこともなく。

ある意味では、やさしい世界に、生きていたのかもしれない。

苦しかった出来事も、いまは柔らかな気持ちに包まれて、記憶の引き出しに入っている。

感情を揺らさず、取り出して見つめることができるぐらいの。

ときおり触れてみては、こうして新しい見え方を体験している。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする