本を読むために、本を読み返しています。
シリーズ物の新刊が、久しぶりに出たときは、既刊から読み返すのが好きなのです。
いちばん最初の本を手に取って、体も心も、物語を迎え入れる姿勢になる。
物語に初めて触れたときの感動を、なぞりながら読んでいく。
初めて読むときは、その場面に描かれている人物の視点で、物語が展開してゆきます。
だから、その背後で起こっている出来事には、あまり目がいきません。
ずっと「次はどうなるんだろう」という気持ちで、ページをめくっています。
読み返すときは、既刊の結末はわかっているので、目の前のもの以外を見る余裕が生まれます。
「ああ、このとき、あの人はこうだったのか」
と、描かれていない心情に思いを馳せたり、
「これは、実はこういうことか!」
「こんなところに、細かな書き込みや伏線があったなんて」
最初に読んだときは気づかなかった、新しい発見に興奮したり。
物語の世界に、一段深く潜ったあとで、満を持して新刊を読む。
というのは、最高の没頭なのです。
新刊の前の“読み返す”は、私にとっては、準備運動。
新刊を楽しむために、幸せを深める、大切な時間です。
普段の“読み返す”は、それとは少し違っています。
感動をなぞりながら読んでいく、新しい発見がある、という幸せは同じなのだけれど、
“今の自分を知れる”ことにも、おもしろさがあるのです。
最初に読んだときと変わらない感動もあれば、まったく違う箇所が心に響くこともある。
思わぬ形で、自分の経験と重なって、理解や共感が深まることがある。
新たな読み方を手に入れるたび、自分が豊かになってゆきます。
一冊の本で、過去の感動を追体験しながら、今この瞬間の自分自身にも没頭できて、未来を豊かに耕せる。
本を読み返す幸せは、この三段活用なのだと思うのです。
