「自分に負けない」って、いったいどういうことなのだろう。
昔の私は、がんばり続けることだと思っていた。
立ち止まったら負け。あきらめたら負け。
でも今は、すこし違う意味を感じている。
子どもが生まれてから、私は本を読まなくなった。
24時間体制で必要とされる集中力、目が回るような忙しさ、慢性的な睡眠不足。
気がついたら、本を読まない日々が、日常になっていた。
あんなに本が大好きだったのに。今だって、きっと、大好きなのに。
私は、読まなくても生きていける人間だったんだ。
「やめたくなかったのに、読むのをやめた」
そう思ったとき、打ちのめされるような敗北感があった。
何が負けた、と思ったのか。
これがなくては生きていけないと、ある意味では執着し続けてきたものが、
実は、なくても生きられるのだ。という事実が。
何に負けた、と思ったのか。
時間、体力、忙しさ…いろんなものを言い訳にして、
好きだったことを手放した、自分自身に。
それでも、私の持ち物から、本がまったくのゼロになることはなかった。
子どもと一緒に絵本は読んだし、大好きだった小説や漫画は、ずっと部屋の片隅にしまってあった。
ある日、私は健康診断のために、末っ子を預けて、病院に行った。
待ち時間が長いから、久しぶりに本でも買ってみようかと、本屋さんに立ち寄って。
ふと目にとまった本を1冊抱えて、待合室の椅子で開いて、読んでいるうちに泣けてきた。
本の内容に感動して…ではなくて。
私はいま、自分のためだけに、本を選んで読んでいる。
それが、嬉しい。心が、震える。
私は、思い出したのだ。
「本を読むのが、大好きだ」ということを。
やめたくないから、続けるんじゃない。
負けたくないから、戻るんじゃない。
「自分に負けない」というのは、たぶん、
自分の大切な部分を裏切らないことなのだ。
誰かに見せるためでも、結果を出すためでもない。
「私はこうありたい」
「これを大切にしたい」
その気持ちに、何度でも帰ってこられること。
だから、やめないでいられる。
やめない私は、自分に負けない私だけれど、わかりやすい強さではない。
大切なものを手放さずにいようとする、静かな意志の姿勢なのだ、と思う。
◇ ◇ ◇
大切なものを、手放さない習慣をつくるための、
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