【noteエッセイ】秋の日差し

「日差しが、柔らかくなりましたね」

朝の挨拶のあとに、そう言われて、驚きと感動が降ってきた。

夏のちりちりと焼けつく日差しからは、確かに変わっている。

こうして文章を書くときには、“日差しが柔らかい”という表現を使うけれども、

日常会話では「少し涼しくなりましたね」だとか、「秋らしくなってきましたね」が多い。

書き言葉と話し言葉が、自然に合致しているひとの、

綺麗な言葉が、さらりと唇からこぼれる瞬間は、なんて美しいのだろう。

秋の日差しの、透明な眩しさに似ている。

“柔らかな日差し”と言われると、真っ先に春を思い浮かべるのだが、

秋の日差しの柔らかさは、春のそれとは違っている。

春の“柔らかな日差し”は、横に広がり、ふわふわと人々を包み込む感じがする。

秋になると、縦に伸び、磨き上げられたガラスを一枚隔てて、まっすぐ降りてくるような。

「日差しが、柔らかくなりましたね」

そう言ってくれたひとの微笑みも、秋の日差しのように柔らかだった。

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