【エッセイ】雨の朝を歩く。

びょうびょうと風の吹く、雨の日の朝でした。
風に傘を傾けて、天気に抵抗するように、必死に歩いておりました。

ふいに、視界が黄色くなりました。
私の背丈と変わらないほどの大きさの、路肩に伸びたセイタカアワダチソウが、
風でぐわりと揺られ、近づいてきたのです。

傘を心持ち上向けて、セイタカアワダチソウを眺めてみました。
びょうびょうと風のままに揺れ、雨に打たれてうなだれています。

よく、柳や竹は、そのしなやかさゆえに折れない例えに語られるけれども、
このセイタカアワダチソウも、十分にしなやかです。
こんな雨風の日でも、折れないのですもの。

それも、茎がしなやかなだけでは、いけない。
風で飛んでしまわないよう、根はしっかりと張っていなければならない。

根があるから、こんなにもしなやかに、雨に打たれていられるのか。
彼だか彼女だかわからないセイタカアワダチソウに比べて、私はどうだ。

雨風に逆らうのが馬鹿馬鹿しくなり、傘を握る手を緩めました。

ぶわ、と雨が吹きつけました。
風にあおられ、傘はぐらぐらと揺れましたが、
私の二本の足は、しっかりと地を捉え、揺るぎなく立っているのでありました。

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