シリーズのなかで、好きなお話の筆頭。
これと『図南の翼』が、お気に入り。

好きなんだけど、読むのも楽しいんだけど、やっぱり忍耐力がいる…。
前半の、苦しみのなかに停滞している時間を、陽子や祥瓊や鈴らとともに過ごさなくてはならないので。
『月の影 影の海』の上巻もしんどいなあと思ったのだけど、それとは種類が違うんですよね。
最初の陽子の葛藤は、環境の過酷さが先立って、まあそうだよね無理もないよねと。
とはいえ、彼女は生きるために動いていて、動きがある。
今作は、初期の鈴を見ているのが、ある種の苛立ちを抑える期間なのです。
祥瓊にも思うところはあったけれど、共感できる部分も多かった。
いま読むと、鈴のことも、もうすこし俯瞰できますけども。
陽子とちがって、言葉が通じず、幼い海客だった鈴。
彼女はとにかく、動きがない。
鈴は、わたしにあまりに近かったんだろうな。
なにせわたしは「行動しない悲劇のヒロイン」だったから。
自分の見たくない部分を見せつけられると、腹が立つんですよ。
…っていうのを自覚できたのは、大人になってからだけれど。
でも。
その停滞と苛立ちがあるからこそ、鈴の成長して変わってゆく姿に、
たぶんきっと、わたし自身の可能性を重ねることができたのだろうな。
そうして自分を生かすことができたのだろうな。
あと、やっぱり、後半の怒涛のように事態が動き出すのを、素直に楽しめますよね。
待った時間が長いだけ、物語の進む喜びが大きい。
時代劇的な気持ちよさも、しっかり味わえるし。
シリーズを読み始めたとき、日本の女子高生という、いちばん自分に近かった陽子。
彼女の造る国を見たい、楽しみだと思えることもまた、嬉しい読後感につながっています。