私の車の前を、タンクローリーが走っていた。
ぴかぴかに磨き上げられた、銀色のタンクに、周りの風景が映り込んでいる。
流れるように、飛ぶように過ぎてゆく景色は、映画に似ている。
移り変わる世界の中で、私の車だけは、真ん中にあり続ける。
ひととき、世界の主人公になった気分を味わえる。
電車の窓から眺める世界に、ガラスに映った自分の顔が重なるのと、同じ感覚だ。
私は世界の片隅に生きていて、淡々と日常生活を送っているのだけれど、
ときおり、こうして、世界の中心に踊り出る。
ふいに訪れるそのとき、胸を張っていられるように、
私は今日も生きようと思うのである。