キイロブックストアさんの『言語論 はねをもつことば』を、読ませていただきました。
【言語論 はねをもつことば(高橋秀元×下川好美)】

「この本を出版するために、出版社を作った」
そんなキイロブックストアさんの夢は、
「全ての人々が、(国連人権宣言に基づく)平等な情報にアクセスできる世界を作ること」
なのだそうです。
代表が、学生時代に、
“わたくしの言語の限界が、わたくしの世界の限界を意味する”
この一言を知ったことが、始まり。
日本人を差別する「きいろ」という言葉を、あえて掲げて出発した、ちいさな出版社さん。
「差別はある」というシグナルを世に送り、
けれども『言語論』という情報に触れることで、私たちはより遠くへ行けるようになる、と伝えてくれます。
ことばは、情報は、生きるための“はね”なのですね。
専門書は初めてで、実は読める自信がなかったのですが、予想以上に、没頭して読みきりました!
すべてが私にとって真新しくて、まるで宇宙を漂っているみたいな感覚になって。
導かれるように、どんどん言語論に入り込んでゆく。
対談形式なので、文章に温度感があって、
「このひとの話を理解してみたい」
と、知らない単語を調べながら、読み進めるモチベーションが上がったり。
図解がたくさんあったおかげで、本文と見比べながら読めたりと、初心者にはありがたい専門書でした!
それにしても…言語を使って、言語を語る・論じるというのは、空気を網で捉えようとするみたいだなあ。
そんな気分で読み始めたのですが、見えない輪郭に目を凝らして、対話を追ってゆくと、
知ることが、ますますおもしろくなってゆきました。
語られるものが、とにかく広いのです!
言語単体ではなく、歴史や文化、民族性も考えて理解するため、
本書に収められている知識と情報は、膨大です。
ヨーロッパの言語について解説しながら、空海やコンピュータにまで話が及ぶ。
空海の話から、認知の話へと繋がる。
ひとつひとつの知識を調べることは、初心者でもできるかもしれません。
でも、それらの繋がりを浮かび上がらせることはできないし、
同じ面の上に置いて、同時に見ながら考えることは、私にはできない。
読んでいて「あれ? この人の名前、この単語、さっきもどこかで…」と、
何度ページを行きつ戻りつしたか、もうわからないぐらい。
知識の点と点の間にあるものまで、鮮やかに見せていただきました。
私が普段、ことばとして認識しているものは、本当にごくわずかな部分だけだったのだな。
ことばには宇宙があると言われているのは、こういうことなのだな…と、体感した一冊でした。
また、あたりまえに使ってきた日本語について、きちんと学んだことがなかったので、
最後のコラムと解説まで、興味が尽きることなく読みました。
“平家物語以前は、全員に通じる日本語はなかった”なんて、知らなかった…!
中盤に触れた空海が、終盤に契沖と繋がって、水戸光圀や赤穂浪士まで話が広がるところ、
そこからさらに日本の言語が形成されていく過程は、おもしろい!
本書の中に、
“砂漠の風紋みたいな。”
“文様という形状が認知された時が字なんです。”
という記述があります。
この『言語論 はねをもつことば』は、私が言語を認知する、新たなきっかけの一冊になりました。
本と私を繋げてくれた、キイロブックストアさんに、心から感謝しています!