「自分の言葉で書く」には、
文章力より、語彙力より、大事なことがある。
と思っています。
「自分の言葉」って、何でしょう?
オリジナルの造語を増やすこと?
AIやゴーストライターを使わずに書くこと?
人の文章からの影響を、排除して書くこと?
私にとっては、どれも違います。
「自分の言葉で書く」というのは、
自分の感覚と、ズレのない言葉を選べること。
だから、文章を「自分の言葉で書く」には、
自分自身の感覚を、よく知っていることが、大事だと思うのです。
何が、どんなふうに見える? 聴こえる?
どんな感触? どんな温度?
私はいま、どんな気持ち?
たとえば、目の前に「大好物のいちごのショートケーキ」があるとします。
目がいくのは、上にのっている、ツヤツヤのいちご?
まっすぐに美しい、スポンジの断面?
最初にフォークを入れるのは、いちご? 三角の先っちょ?
フォークは、ふんわりと沈んだ? 滑らかに切れた?
口に入れたら、どうだった?
クリームは、しゅわりと溶ける? まったりと口を満たす? 甘さはどう?
スポンジは、しっとり? ふわふわ?
軽い口当たりが好き? どっしりとした食べごたえが好み?
ケーキの甘さといちごの酸味のハーモニーは、どう?
何がどんなふうに、おいしいなって思ってる?
同じものを見ていても、同じ体験をしていても、
同じものが好きだったとしても、
どこにフォーカスするかは、本当に人それぞれなので。
自分の感覚を探り当てて書くと、自然と自分らしくなる。
むしろ、自分らしい言葉にしかならない、と思うのです。
ちなみに私は、いちごのショートケーキは、
つやっと丸みのあるいちごと、鋭利にカットされた先っちょとの対比が、
見て美しいなと思うポイントです。
どちらかというとしっかりめの、しっとりしたスポンジに、
甘さ控えめの、軽い口当たりのクリームがのっているのが好き。
先っちょにフォークを入れる瞬間の、ふわ、きゅっ…という感触が、幸せ。
クリームとスポンジのハーモニーに飽きる頃に、いちごのほのかな酸味が混じってくるのが、いい。
間に挟んであるフルーツも、黄桃とかパインとかみかんじゃなくて、いちごだと嬉しさが倍増です。
自分の感覚を知るには、好きなものや楽しいことを前にしたときの、
体の反応と、心の動きを観察してみるのがおすすめです。
悲しいこと、つらいことを深く観察するのは、なかなかにしんどいので。
感覚をていねいに言葉にしていくと、
それだけで、自分の言葉で書いた文章になります。
「自分の言葉で書いた」と、
あなたが自信をもって言える、文章になります。
