そっか。
本って、つくっていいんだった。
あたり前といえば、そうなのだけれど。
本をつくるのに必要な資格なんてものは存在しないし、
本をつくっちゃいけない法律もない。
ネット上の発信や出版ではなく、
手ざわりのある、モノとしての本。
誰でも、つくっていいんだった。
すっかり忘れていた自分に、驚きました。

読んでいて、ふいに思い出したのは、学生時代のこと。
今のように、各家庭にパソコンやプリンターがあるわけではなく、
コンビニプリントも身近ではなかった頃。
同人友達のお手伝いで、原稿を抱えて近所のコピー機に向かい、大量の小銭を投入し。
印刷の位置や濃さや大きさを、ああでもないこうでもないと、確かめ合いながら調整して。
また家に帰って、コピー原稿と表紙をホチキスで綴じ、コピー本と言われるものをつくった日のこと。
本には、物語がある。
本づくりにも、物語がある。
友達と一緒につくった、あの日のコピー本には、
私たちだけの物語がありました。
そして、もうひとつ。
大人になってからのこと。
まだ幼かった娘が、紙をセロテープでつなぎ合わせて、
絵と文字を書いて、絵本をつくって、プレゼントしてくれた日のこと。
「ありがとう」がいっぱい詰まった、それはそれは素敵な本でした。
藤原印刷さんが、本書で
”伝えたいのは「つくるよろこび」”
と、おっしゃっていました。
「よろこび」に満ちた記憶を、まざまざと思い出せたのは、
この本を読んだから。
本ができあがるまでの、作者の数だけ存在するストーリー。
その一部に、本書をとおして触れることができて、
とっても幸せな気持ちになりました。
表紙の文字の、手ざわりとか。
本をひっくり返すと、白かった紙の束が本になっているところとか。
カバーを外すと、一面が発注書の仕様なところとか。
いろんな紙やインクが、本文に使われていることとか。
本そのものにも、楽しくなる仕掛けがたくさんあって、
「本をつくるのって、いいな!」って思います。

久しぶりに、コピー用紙でつくってみました。

子どもが小さい頃、お絵かきして遊んだな。
中身は、まだありません。
こんなことをしたくなるぐらいには、
「本づくりって、いいな」と思う一冊。
本で、本づくりを語る。
その営みが、尊いです。