調べるって、おもしろいからさ。

パン屋さんで、パンを買ってきました。

家に帰って、袋を開けたら、
ふわあっ…!
この世の幸せが、箱から飛び出したみたいな、いい匂いがします。

スーパーで買ったパンにはない、幸福感に満ちた香り。
この正体は、いったい何なのだろう?

AIに尋ねてみたら、「メイラード反応」というそう。

「パン屋さんの香りって、焼きたての生命がまだ生きてる瞬間の香りなんだよ。」
と、私の使うAIは語ります。

わかりやすく解説したうえで、使い手がしっくりくるであろう表現を加えるところは、能力が高い。
私の体感覚を、わりあい的確に言い表していると思います。
知識と納得を手に入れる、効率的な最短ルートではある。

だけど、何かを調べるときのおもしろさって、そうじゃないんですよね。
有象無象の中から、自分が拾い上げた言葉がつながる瞬間が、醍醐味なんですよ…!

ちょっとつまらなかったので、次はGoogle検索をかけてみます。
「メイラード反応 とは」

やはり、最初に出てくるのはAIの要約です。
簡潔でわかりやすい説明。
でも、いま私が求めているのは、それじゃない。

ウィキペディアを読んでみると、なかなかに専門用語が多く、
反応の起こる過程などは、読めるけれど理解できない。
めちゃくちゃ科学的です。

この、調べれば調べるほど、わからないことが出てくるところ。
世界はおまえごときには理解できないぞ。みたいな、
いっさい忖度を寄せつけない感じ。
いいですね!

今度は、食品会社や研究会、調理道具メーカーが説明する
「メイラード反応」の話を、読んでみます。

こういう情報は、わかりやすい言葉なだけでなく、
普段の生活で、私たちが目にする現象を、軸にしてくれています。
よくわからない学問が、自分事になっていく感覚が、よいですよね。

ちょっと、紙の本も開いてみましょうか。
国語辞典。

しかしながら、ただいま家にあったのは、小学生向けのものだけで。
「メイラード反応」は、載っていませんでした。

「めいよ(名誉)」がきて、その次は、
「めいりょう(明瞭)」まで飛んでいます。残念。

同じページに「メインストリート」とか「メインイベント」とか
載っているのが、現代の辞書っぽい。

カタカナ語、けっこう多いですね。
「メリヤス」「メルヘン」「メロディー」「メロドラマ」「メロン」
と並ぶ字面の、楽しさよ。

そして、最近の子ども向け辞書は、資料ページもおもしろい!
同じ言葉を、国語辞典・漢字辞典・図鑑などなど、
いろんなもので調べたら、なんて書いてあるかな? とか。
言葉のコラムもいっぱい。読み応えがあります!

…メイラード反応のことなど、すっかり忘れて、
あやうく国語辞典を読みふけるところでした。

ともかく、メイラード反応というものが、
パン屋さんのパンの、おいしさと幸せの秘密であることはわかりました。

ちなみに、小学生の国語辞典が語る「おいしい」は、
味がよいこと。その人にとって、よい状態になること。

「しあわせ」は、運のよいこと。幸福。
幸福って、そのまんまだなあ。
くすっと笑って「幸福」をめくると、
何不自由なく、心に不平のないこと。しあわせ。

そうだなあ、あのパンの香りをかいだ瞬間、
私の心には、何の不自由も不平もなかったなあ。

思いつくままに、思考をとっちらかして調べるのも、
私にとっての「メイラード反応」なんじゃないか。
という気がしてきました。

おいしさを形成する上で、重要な化学反応なんですよね。
ほら、こうやって、一見何の役にも立たないことを調べている時間。
幸せだし、おもしろい。

私にとっての、重要な化学反応。
調べるって、おもしろいからさ。

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