杉森くんを殺すには(長谷川まりる)

タイトルと表紙が、もう勝ちだと思う。
可愛らしい絵に、物騒な単語。

いったい何の話なの? って。
そりゃあ、読みたくなっちゃいます!

1行めも、すごいと思う。
”杉森くんを殺すことにしたわたしは、とりあえずミトさんに報告の電話を入れた。”
知らない固有名詞が2つもあって、なお、興味を惹く。

前から読みたかった本なんです。
書店員さんがイチ押しにおすすめしてくれた機会に、買っちゃいました。

帯には「傷ついた心を取りもどす物語」とあります。
読んでみて、これは、
「新たな主観で出来事をとらえ直す物語」でもあるんだな、と感じました。

起こった出来事はひとつでも、見えている面は、人の数だけ。
解釈も、人の数だけ。

だったら、自分が生きるために、幸せになるために、
みんな、解釈を選べばいいじゃないか。って。

ともかく、無事に? 杉森くんを殺せて、よかったです。
あ、ちゃんとハッピーエンドです。
涙にはまみれるけれど、血まみれにはなりません。

いまの私は大人だから、人との距離感を、昔より測れるようになりました。
だけど、10代の私が、主人公のヒロと同じ立場に置かれたなら、
”いっしょに湖の底に沈んでしまった”でしょう。

それだけに、読んでいて、ひどく痛むことがある。
引きちぎられそうに。

だから、ヒロのこの心情に、ほっとしました。

”はっとした。
わたし、すごく自然に、良子さんの役に立ちたいって思ってる。
義務感とか、罪悪感からじゃなく。自然に。
友だちを助けたいって、思えてる。”

この感覚、すごく大事にしてほしい。
そして、私は大人だから、子どもたちのその感受性を、守れるようにしたい。

大人の目線で読むと、こんな気持ちになります。
もしも、ヒロと同じ年齢のころに読んだら、私は何を感じて、何を考えただろう。

本は、必要なタイミングで現れるものだと思っているので、
基本的には、いま感じたことしか、感じない私なのですが。

10代の私に、ちょっと聞いてみたくなりました。

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