マスクの下で

先日、出先で知人に会いました。

コロナウイルス対策で、みんながマスクをしているので、一瞬誰だかわからなくて困ります。

他愛ない話をして笑っていたとき、ふと気がつきました。

――私、口に手を当ててない。

人前で笑うことに苦手意識があった私は、口元に手を添えるのが癖になっていたんです。

だけど、マスクがあるから、口を開けて笑えた。

手で覆い隠さないと、解放感があるんですね。

マスクで隠れるということは、その下でどんな口元をしていても、わからないということ。

ならば…と、外を歩きながら、口を開いたりすぼめたり、表情筋を動かしてみました。

あ、顔がほぐれる感じ、気持ちいい。

すれ違ったご近所さんへの挨拶も、心なしか力強い声が出たような気がします。

いつもは微笑みを浮かべるように意識しているから、穏やかで小さな声なんです。

筋肉がほぐれているとよく動けるのは、体も顔も同じなのだと実感しました。

もしかして、マスクをしていたら、引っ込み思案な人も、話しやすくなるのかもしれません。

少なくとも私にとっては、安心できる仮面のような存在のようです。

この機会に、表情豊かにしゃべる練習をしようかな。

思ってもみなかったものを、コロナで得ました。

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