音楽の話でいうと、ですね。
私は、楽譜や原曲がないと、歌ったり弾いたりできません。
「自由に表現していいよ」と言われると、どうしたらいいのかわからない。
きっちりとなぞることはできるけれど、アレンジはできません。
自分の思いを、音楽にのせて表現することも、できません。
音楽が自由になったとたんに、難しくなる。
絵を描いたり、写真を撮ったりすることも、同じかもしれない。
“模写する”“テーマが決まっている”“いくつかの選択肢から選ぶ”
それなら指を動かせる。
自由に描いてね。自由に撮ってね。
そう言われると、戸惑ってしまうんです。
お料理、デザイン、ファッション、メイク、手芸、スポーツ、話術…
あまたある物事の表現の自由を、実はどうしたらいいか、わからないでいる。
でも、ただひとつ。
文章を「自由に書いていいよ」と言われたら、嬉々としてペンをとります。
そこに戸惑いや居たたまれなさは、まったくなくて。
何を書こうかな、どんなふうに書こうかな。
どんな気持ちを、伝えようかな。
文章の「自由」だけは、とてもわくわくします。
言葉を使うやり方が、何よりもが好きだからなのか。
昔から慣れ親しんでいて、自由を楽しめる基礎体力があるからなのか。
まだ言葉にならない理由が、いつか自分の中で、確信に変わったら、
今とは違う世界が、見えてくるような気がするのです。