読むことと書くこと。
それは私にとって、呼吸のようなものだと思っている。
吸って、吐く。
吐いたらまた、自然と吸いたくなる。
乱れると、なんだか落ち着かなくなる。
読むことは、自分の中にはない感覚にふれること、景色を見られること。
名前のない感情や、言葉にならなかった記憶、未知への好奇心が、
誰かの言葉にのって、私に届く。
旅先の朝、窓を開けた瞬間のような感動。
そんなふうに、誰かの世界を感じる時間が、好き。
呼吸は、吸い込んだままではいられない。
読んだら、私も書きたくなる。
言葉にしてみたくなる。
誰かに伝えたい、届けたい、という気持ちもあるけれど、
それ以上に、私は書くことで、自分とつながり直している。
気づいていなかった感情や思考に、ふれてみる。
少し前の自分に、やさしく声をかける。
未来の自分に、今日の私を伝えてみる。
書いているうちに、今ここにいる自分の輪郭が見えてくる。
私の目にだけ、映る景色があることを知る。
誰も知らない物語を発見したときのような、高揚。
私だけの世界を感じる時間が、心地よい。
読んで、世界が広がってゆく。
書いて、私自身に戻ってくる。
そのくり返しが、私の呼吸。
読むことは、私の世界に、新しい風を招き入れること。
書くことは、私の世界を、心地よく整えていくこと。
読んで。感じて。書いて。読んで。
そんなふうに、私は今日も、言葉を通して呼吸している。
