表紙を見たら、買ってしまいますよね!

帯も最高です。
”悶絶と歓喜の94篇”、じっくりと堪能しました!
冒頭の田山花袋から、すでにいい。
さんざん「もうだめだ」と頭を抱え、当たり散らしたあげくに、
“ところが、ふと、夜中などに興が湧いて来て、ひとりで起きて、そして筆を執る。
筆が手と心と共に走る。そのうれしさ! その力強さ! またその楽しさ!”
この変わり身、わかるわー!
深くうなずいてしまうのは、私だけじゃないはず。
藤子不二雄A先生の『まんが道』や、長谷川町子さんの、
〆切ギリギリ感があふれる描写も、よいですよね。
絵にかいたような作家と〆切に、読者は逆に喜んじゃう。
〆切を過ぎて原稿を渡す、取る。
美談というか、武勇伝というか。
気骨がある、作家らしいエピソードとして、描かれている一方で。
〆切をきっちり守る方々の話も、事欠きません。
森博嗣さんを読んで、
”遅れが契約違反にならない”って、確かに不思議な世界だよなあと。
外山滋比古さんの、
“仕事はのばせばいくらでものびる。
しかし、それでは、死という締切りまでにでき上る原稿はほとんどなくなってしまう。”
という言葉が、めちゃくちゃかっこよくて。
そう、命という時間を使って、作家は文章を書いているのですよ。
かくありたし、と思う姿勢。
それにしても、よく「〆切」という題材で、これだけ集めてきたものだと。
夏目漱石、太宰治、手塚治虫。村上春樹、内田康夫、池波正太郎。
小川洋子、大沢在昌、谷川俊太郎…。今昔さまざまに。
内容も、実体験から書簡、創作にエッセイ、
『勉強意図と締め切りまでの時間的距離感が勉強時間の予測に及ぼす影響』という論文までありました。
中には「締切意識度チェック」なんていうおまけもついているので、
やってみた方がいたら、ぜひどうだったか教えてください!
ちなみに、私の先延ばし度は「軽度」らしいです。
こちらの本は、2016年が初版で、手元にあるのは、2025年に発行された刷なのですが。
その下に書かれていたのが、この文言でした。
“ご報告
二〇一七年十月、
本書の続編『〆切本2』を
予定よりちょうど半年遅れて
刊行いたしました。”
うん。さすが〆切本。
すみずみまで余すことなく、最後まで油断なく手抜かりなく、
〆切で埋めつくしてくるところが、好きです。