ほたるいしマジカルランド(寺地はるな)

秋の三連休!

読書三昧していたので、感想も順に綴ってゆきます。

SNSで見かけて、読んでみたかった一冊です。

【ほたるいしマジカルランド(寺地はるな)】

想像していたのは、ちょっぴり不思議な、奇跡みたいな、物語。

描かれていたのは、普通の人々の、普通の日々の、物語。

お話の主役になるのは、老若男女と年代の幅が広く、

さまざまな人物に、さまざまに共感したり、反発を覚えたりもします。

それがまた、現実に生きている人物に近しく感じられるのです。

“キャラクター”ではなく、“人物”と書いたほうが、しっくりとなじむ。

際立って印象に残る人はいないし、日常から離れた、特別な出来事も起こらない。

なのに、すごく温かく、鈴のように心が震える物語。

どこにでもいるだろう誰かが、どこかで過ごしているのだろう毎日。

今まで読んできた連作短編と比べると、明確な繋がりの演出は、驚くほど少ない。

ほんの一瞬、細い糸が交差するぐらいの縁です。

小説としてはちっとも劇的じゃないのに、自分の人生を照らし合わせて想うと、

誰もがめくるめく物語を持ち、尊い日々を過ごしているのだな…と。

“誰かがそっと、がんばる日常”を知ると、こんなに不思議な感動に包まれるんですね。

我知らず、積み重ねたものがある。

深く知らない彼女たちにも、すれ違っただけの彼らにも、きっとこんな物語がある。

――そう思えるだけで、世界が優しく見えてくる。

ささやかな、贈り物のような、物語。

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