侠飯(福澤徹三)

読んだら、ごはんが食べたくなりました(笑)。

「就職活動に悩む大学生の部屋に、ヤクザの組長が居座って料理をする」というシチュエーションだけでもおもしろいのに、出てくる料理がことごとくおいしそう!

プロの料理ではなくて、家庭料理にひと工夫ひと手間を加えたり、ちょっといい素材を使ったりなところが、またいいんです。

身近に感じるし、「食べたいなあ」「作ってみようかなあ」という気持ちになります。

そこまで料理にこだわる男が、

「この世でいちばん旨いものは、体を張らなきゃ食えねえ」「食材やレシピなんか、ほんとはどうだっていい。命がけで仕事をやり遂げたときの飯がいちばん旨いんだ」

と語ると、重みがあります。

「おまえに将来なんかない」

「えッ」

「あしたという日が永遠にこないように、将来も未来もない。あしたになれば、きょうになる。きょうになっても、あるのはいまだけだ」

「だから、なんなんですか」

「おまえが変わるしかない。おまえがいまを変えるんだ」

そんなやりとりを経て、主人公・良太が物語の終わりに、

柳刃がいったように、いまを変えるのは自分しかいない。

いつの日か、命がけでやれる仕事を見つけて、この世でいちばん旨い飯が食いたかった。

と進んでいく姿に、じいんとします。

主人公とともに物語を歩むのは、今も昔も楽しいけれど。

親になってからは、「年下の主人公を見守る」という味わい方が、ひとつ増えました。

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