【noteエッセイ】パレット

可愛い色が好きだ。

私にとっての「可愛い」色は、ふわっと柔らかな、パステルカラフル。

いつでもそこにある安心感の上で、ポップに弾む色彩である。

美しい色も好きだ。

「美しい」と感じる色を、言葉で表現するなら、深く艷やかに研ぎ澄まされた、凛とした佇まい。

こちらは対照的に、その一瞬にしか存在しないような、鋭く息を飲むような色合いである。

どちらも魅力的で、いつまでも眺めていたいし、そばに置きたい。

けれども、私が普段過ごす部屋や、着る服は「無難」なのだ。

白とベージュ系統の、肌ざわりが好ましいものでまとめられている。

穏やかだけれど、わくわくすることがない。

可愛い色や美しい色を、自分のビジュアルに、どう取り入れたらいいのだろう。

とっつきやすいのは、ジュエリーやメイクや小物類からだと思うのだが、

ただ好きな色を身に纏っても、必ずしも似合うわけではなく。

「可愛い」にも「美しい」にもそぐわない、ちぐはぐな私ができ上がる。

どこに、どうやって、ぴたりと合わせたらいいのやら、途方に暮れる。

こうして文章を綴っていると、心の中は「可愛い」「美しい」色彩に満ちていると感じるのに、

外から見た私は、なんとも物寂しく、地味な色をしている。

私という人間は、心にあふれる色彩を、ありのままに見つめるための、パレットなのかもしれない。

パレットがカラフルだと、心の色が見えにくい。

だから私は、無色なのだ。

それでもときには、パレットではなくカンヴァスになって、色とりどりの心をのせて、街を歩く遊び心は持っていたいと思っている。

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