生まれてはじめて、海辺の町に住みました。
家のそばには、川が流れています。
いくつかの橋を越えて、海につながる川です。
いつもは、海に向かって、さらさらと流れてゆくのに、
ときおり、たぷんたぷんと、逆向きに波うっているのです。
潮の満ち干きによるものだよと、教えてもらいました。
海に流れこむ力と、海から打ちよせる力。
やじろべえのように、絶妙なバランスで、
海と川が、いまここに成り立っているのです。
いまここに立ち、波うつ川面を眺めている私も、
こころもとない点の上に、立ちつくしているようでいて、
ころがり落ちることは、きっとないのでしょう。
私の生きる場所は「いま、ここ」です。