くらべて、けみして 校閲部の九重さん(こいしゆうか)

小さな本屋の店主さん・ 比嘉教子 ひがっちさんの選書で、わが家にやってきた本。

私にこれを選んでくれる、ひがっちさんの愛と、

本好き仲間の匂いを、たっぷりと感じる一冊です!

【くらべて、けみして 校閲部の九重さん(こいしゆうか)】

本好きだから、存在は知っていても、実体のわからない職業のひとつ。

それが「校閲」。

帯に書かれた、三浦しをんさんの、

「校閲者は妖精だ。」

に、深くうなずいてしまいました。

校閲さん、いいなあ、好きだなあ…と、本を抱きしめたくなる。

愛と情熱が変態で、実にエモい!

第1話で、すでに「ただ校正をすればいいってわけじゃない」のを思い知り、

全15巻の漢字辞典の存在に慄き、直筆原稿の逸話に震え。

躍動感あふれる類のストーリーではないのに、

淡々とした表情や言葉から、ふつふつと滾るものが伝わってきます。

ひとつひとつに、静かな重みがある。

“百年後に残す一冊を作っていくという意志”

“与えられた時間内に、やるべきことをやる”

“ゲラで協力し、ときに戦う”

“100%の校閲を目指すことは難しいとわかっていても、校閲者はみな覚悟と責任を持って最終的に校了にするんだよ”

“それでもミスから逃れることはできないのが校閲の仕事”

これらの台詞から漂う矜持が、たまらない。

もしも平安時代に生きていたなら、「もののあはれ」と綴って、語りたい一冊です。

作家さんや編集者さんだけでなく、この校閲さんや、製本・流通など、

本に関わる、見えない人たちの物語は、裏方の極みを思い知るようで。

本好きとしては、感謝の一言に尽きるのです。

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