森博嗣さんの、小説以外を読むのは、実は初めて。
でも、森博嗣さんだからこそ、読んでみたいなと思いました。
【お金の減らし方(森博嗣)】
理路整然としているのだけれど、決して理詰めではなく、
淡々、たんたん、とリズムよく入り込んでくる文章。
小説でも使われている、森さんの「エネルギィ」という表記が、実は好き。
こちらは「欲しいもの」という価値観で、人生を問いかけてくる本でした。
“必要だから買ったのではない。欲しかったから買ったのだ。”
が、最初から最後まで貫かれています。
お金の減らし方とは、お金の使い方。
自分にとって価値のあるものを得るために、お金を使うことは、
自分の価値を見つける方法なのだ、と森さんは言います。
“もし、写真を撮って人に見せることができないとしたら、それを買うだろうか?
それを食べにいくだろうか? その場所へ出かけていくだろうか?”
SNSとともに生きる時代、はっとさせられる問いかけです。
「欲しいもの」と「必要なもの」。
自分がお金を使ったものを、試しに分けてみたら、
欲しいものは、明確に「欲しい」「○○がしたい」という意思があったのに対して、
必要なものは、用途こそ考えているものの、必要な数は曖昧だったり。
「このぐらいあれば大丈夫だろう」と、なんとなく安心感を得るためのものだったり。
なるほど確かに、これは価値を見失いやすい基準なのだと実感します。
自分が欲しいものがわからない、という人に向けて語られた、最後の一節に、
森博嗣の美学の一端が見えました。
“孤独を感じる時間を、もっと大事にすれば、わかるかもしれない。
そう、まず、お金を使って、孤独を買った方が良いだろう。
孤独を手に入れるために、お金を減らすなんて、なかなか粋ではないか。”
これを粋だという価値観が、粋だなと。
お金の本ではあるのですが、何より森博嗣の本として、最後まで味わった一冊でした。