人はみんな、いつか死にます。
死ぬ側と、見送る側と、どちらにも心に迫り、胸を穿つものがあります。
亡くなる人、残される人、さまざまな思いを感じながら読みました。
ドラマチックな劇ではなく、続いていく日常の中にある、人が死ぬということを噛みしめる短編集です。
悲しみや哀しみがしんと伝わってくるのに、命は終わっていくのに、不思議な温かみのあるお話ばかりで。
それぞれの物語が、少しずつ繋がっているのも、温もりのひとつですね。
昔は、自分が死ぬことそのものや、伴侶を亡くすことの方が恐ろしかったけれど。
親になったからなのか、今は、子どもが先に死ぬことや、逆に子どもたちを残していくことの方が、怖いです。
けれども、私が生きていても死んだ後も、家族の日々は続いていくのでしょう。
深い悲しみを抱えて、でも少しずつ忘れられていき、家族みんなが自分の人生を歩いていくなら、それも良しかと。
できるなら、生きて見ていたかったな、とは思うでしょうが。
私の「その日」を、穏やかに迎えて、「その日のあと」も変わらずに生きていってほしいです。
こんなふうに感じるのは、重松清さんの「生きることを嫌いにならないで」というメッセージを、受け取ったからかもしれません。