白い犬とワルツを(テリー・ケイ)

ベストセラーになった当時、読んだのだけれど、

良さを理解するのが、私には難しかったお話。

【白い犬とワルツを(テリー・ケイ)】

40代になって、読んでみて。

ああ、童話なんだな、と。

ひとの、人生の、童話。

起こっている出来事だけ並べたら、どうということはないような。

誰しもに訪れる、晩年の景色なのだと思う。

だけど、誰もが心の内に持っている感受性で、そこにある生命と愛情を見つめたら、

それは、そのひとだけの童話になって、みずみずしく世界に存在するんだなあ、って。

私は今ちょうど、サムの娘息子たちにあたる年代だからか、

実際に肉親の老いを見てきたからか…

サムの物語に触れると、祖父母や両親にも、彼らだけの童話があったのだろうと。

だけど私は、その物語を、ちっとも、ちゃんと見ていない気がして。

もう捲れないページに、哀しみを抱いたり、

まだ捲れていないページに、焦燥を感じたりします。

自分がもう少しだけ年老いてから、もう一度読んだら、何を思うのか。

興味深い一冊でした。

こちらは、昨年の神保町旅で、ホテルからいただいた本です。

サムと同じ年頃になって、体が思うように動かなくなったとき、

初めて訪れた神保町の思い出は、私の内側で、どんな物語になっているのだろうな。

読んでいる間より、読み終えてしばらく後のほうが、

いろんな思いが、じんわりと心に響いてきます。

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