「花さき山」が、好きでした。
白と黒の、切り絵の絵本。
黒い背景の中に、赤や青や黄、緑の色彩が、とても美しい。
やさしいことをすると、花がひとつ咲くのだ、
と、あやが山ンばに教えられたとき。
ぐっとこらえた思いが、花になる。
流した涙のひとしずくが、露になる。
一面に美しい花が咲いているページを見たとき、
本当に嬉しかったのです。
私の中にも、こんな美しいものごとが、存在しているんだ。
花を咲かせられる、やさしさが。
私にも、涙をこらえた小さな出来事が、ありました。
でも、自己犠牲とはちがうんです。
心から「誰かのために」と思って選んだことだから、後悔はない。
ただ、人知れず飲み込んだ思いが、
世界のどこかで、美しい花という形になっている。
私は、美しいものを持ちえている。
私は、美しく在ることができる。
自分を肯定する気持ちをくれた、絵本でした。