シンプルで、わかりやすいものが好きだ。
わかりやすいと、伝わりやすい。
ルールも、暮らしも。言葉も、芸術も。
けれど、料理をおいしく作るには、ただシンプルなだけでは無理である。
まず、素材を選ぶ知識や、扱い方の技術がなくては始まらない。
シンプルな調理と味つけを活かすには、素材や出汁などの、旨みという深さが必要だ。
そうして出来上がった、見た目にもわかりやすい料理は、染み込むように体になじむ。
シンプルなものの中には、それはそれはたくさんの、知識や技術や思いが詰まっている。
磨き上げ、削ぎ落とし、わかりやすい形になったものが、いちばん好きだ。
限りなく深いものが、何よりも美しい形で、目の前に表れる瞬間が、尊い。
言葉も、そのように使いたい。