【読書スポンサー様】泣かない子供(江國香織)

今回の読書スポンサー様は、

スナック『オンラインCandy』でお世話になっている、 小林 正明 さん!

ありがとうございます!

温かいコミュニケーションの場を作り、

「キッカケは、待っていても出会えないけど、取りに行ったら、案外すぐだよ」

と、伝えてくださっている方です。

そんな小林さんからの1冊は、

【泣かない子供(江國香織)】

私の江國香織さんデビューは、『冷静と情熱のあいだ』でした。

小説は読んだことがあるけれど、エッセイは初めて。

まず、タイトルに惹かれます。

「泣く」とか「泣けない」じゃなくて、「泣かない」子供。

そこに、少女から大人へと揺らぐ時代の、意思や決断を感じる。

ぱらりとめくると、詩的な目次が並んでいて、

それだけで、楽しさがしっとりと熱を帯びてくるようです。

エッセイは、私にとって“軽く開いて出入りする読書”。

小説よりも、現実に近い世界だったはずなのですが、

最初の一編を読み始めたとたん、ひゅっと別の場所に攫われました。

細切れに読むのによいかと思っていたら、集中して読み続けたい文章だった。

特に、恋愛と本についてのエッセイは、

ずぶずぶと芯まで浸ったまま、読んでいたくなります。

恋愛を語る言葉たちは、外国の街並みによく似合う、名前のわからないお菓子みたい。

知っている気がするのに、知らないようなものを、惹かれて口に入れてみたら、

思わぬ繊細な奥深さにおどろくような。

知っている感情なのに、知らない感情の話をきいているような、

たいへん美しいものごとを、眺めているような気持ちになります。

本について語る言葉たちは、実に「おいしそう」。

作中の『本を読みたくないとき』に、こんなふうに書かれています。

“これは蠱惑だ。禁断の実。

やめたいのにやめられない、と思いながら本を読んでいるときの興奮は、

ほとんど肉体的快楽といっていい。”

“紙に閉じこめられたもう一つの空間を、自分で頁をめくり、

読みすすむことによってとき放つ、という能動的な作業のもつ愉楽。”

“ぞくぞくするような読書の興奮、の持つある種の麻薬性は骨まで冒すものだ。”

口の中から、甘美が脳を貫く、この感じ。

江國香織さんが、本について語るのを読むときが、まさにこれ。

私は、家族が寝静まった夜の深みに、

頼りない薄明かりの中で、

夜ふかしを咎められやしないかと、

音を立てずにページをめくった子ども時代のように、

『泣かない子供』を味わっているのです。

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