ぼくときみの半径にだけ届く魔法(七月隆文)

重すぎず、軽すぎず、おもしろい小説が読みたい気分だったとき。

買おうかどうしようか、書店で何度か悩んでいた1冊を、図書館で見つけて借りてきました。

どこか現実感に乏しい、真っ白な恋の風景から始まって。

まるで美術館の絵を眺めているようだった2人が、どんどん立体的になって、色づいていき。

「足りなかったものが埋められていくように」形作られた愛の情景の真ん中で、仁と陽が笑っている結末。

素敵な恋ですね。

白く垂れ込めた冬から、春の柔らかな木もれ日へと移りゆく季節を眺めている気持ちになります。

――実は、ヒロインが難病という設定だったので、味わいはどうかなあ…と心配していたのですが。

陽と同じ病には、大小の差はあれど、実は誰でもかかる可能性があるんですよね。

そこからの、筋の通ったハッピーエンドで、嘘臭くない温かみがありました。

自分の周りにいてくれる大切な人たちのことを、感じられる物語です。

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