お風呂場で髪を洗いながら、ふと思ったのだ。
頭皮と顔の境界線はどこなのだろう、と。
暑さが日に日に増してきて、汗をかくので、頭皮はしっかりとほぐして洗ったほうがよい、と聞いた。
同感である。ぐっと指の腹に力を込めると、実に気持ちがいい。
顔の皮膚は弱いので、優しく泡をのせるように洗ったほうがよい、と聞いた。
こちらも同感である。顔を強くこすると、すぐに肌が荒れてしまう。
さて、では、その「しっかりと洗う」と「優しく洗う」の境界線は、いったいどこにあるのだろう。
やはり髪の生え際だろうか。
そうなると、年齢とともに生え際が後退した場合は、顔の面積が広くなるのか。
いや、その論理だと、スキンヘッドの人はどうなるのだ。
髪の有無に関わらず、頭皮は頭皮なのだろうか。
そもそも、髪の生え際の皮膚と、その1ミリ下のおでこの皮膚とに、さほど強度の差があるとは思えない。
目や口まわりの皮膚はともかく、輪郭部分は意外に頑強のような気もする。
考えれば考えるほど、くっきりとした境界線がわからなくなる。
頭皮と顔の間は、まったく曖昧な、グレーゾーンである。
普段の洗顔で意識したことはなかったけれども、そのグレーゾーンであろう輪郭に向かって、少しずつ力を込めて洗ってみた。
中央は優しく、顔の端に向かうほどしっかりと。
これが思いのほか、気持ちがいい。
フェイスマッサージとは、まさにこうであろうと錯覚するほどの、極上のひととき。
グレーゾーンの曖昧さを、ありのままに大切にしたら、実に心地よく過ごすことができるのだ。
私は今日、お風呂場で、人生の教訓を得たのである。