クサヨミ――草を読む人、つまり植物から何かを感じ取れる人のこと。
クサヨミのひとりである、中学1年生の剣志郎が、タラヨウの木に触れたら、赤い炎と女の人が見えた――。
何それ、おもしろそう!
児童文学なので読みやすく、けれどしっかり「空想科学小説」と銘打たれている通りの味わいでした。
学生時代に、「夏への扉」とか「七瀬ふたたび」を読んだときのような、どきどき感と。
理系は苦手なのに、このときばかりは科学的論理や思考の魅力に惹き込まれていく、わくわく感と。
ファンタジーとはまた違う種類の、「絶対にありえないとは言いきれない世界」が、薄い膜を1枚隔てた向こう側に、広がっているような気がするんです。
何だろう…私にとっては、ファンタジーは「異世界」、SFは「パラレルワールド」という感覚なのですが。
クサヨミが存在する並行世界が、きっとあると思う。
そんなふうに、ぐいっと入り込んで、一気に読みました。
決して壮大ではなく、むしろふり返ったらすぐそこにありそうな、ささやかに違和のある世界が、物語を身近にしてくれます。
短時間で気軽に楽しめるSF小説も、いいですね。