有元葉子さんの、暮らし本を読んでみました。
こんな暮らしをしてみよう! とは思い切れないのだけれど、「気持ちよく生きるためにはどうしたらいいか」という考え方が、とても参考になりました。
有元さんは、ちょこちょこ掃除で、汚れをためないそうです。
さらに、
汚れだけでなく、ものもためません。
お腹の中にもよけいなものはためないし、心の中にもよけいなものをためない。
入れたものがスムーズに流れて、循環しているのが、快適な体であり、快適な暮らしであると思います。
という暮らしぶりが書かれており、一時期流行った「いらないものを捨て、外から入ってくるものも減らし、ものに執着しないで身軽に生きる」断捨離ブームとは、違う視点です。
片づけをして、家事の流れを作る
有元さんの、暮らしを滞らせず、循環させるための順番が、これです。
本の構成としては、「片づけ」「整理整頓・収納」「家事の進め方」「掃除・メンテナンス」という流れになっていますが、読んでいくと、彼女の「そのすべてが本当はひとつながり」という意味が、よくわかりました。
有元さんが、干し野菜やマリネ料理のレシピ本を出しているのは、新しい料理としての提案ではなく、「切れることなく、延々とつながっていくもの」である暮らしの中で、食材をどう使いきるかという発想なのだそうです。
皮まで食べきるならば、できるだけ良い大根を選びたい。
材料を無駄なくおいしく食べようとすれば、塩やオイルなどの良質な調味料や、おいしいおだしが必要。
良い調味料やおだしを使うなら、すぐ取り出せるここに置いて、この容器やディスペンサーに移しておけば、適量が使えるし液だれもしない……とストーリーはどこまでもつながっていきます。
暮らしを大切にするって、そういうこと。すべてがつながった「流れ」なのです。
なるほど、全体を見渡してみれば、こうしてひとつながりになっています。
だからこそ、一見面倒にしか思えないような手間でも、惜しまない暮らしぶりになるんですね。
その流れは、ごみの行方や、地球環境にまで、自然とつながっていきます。
でも私は、その一部を見聞きしては、「こんな丁寧な暮らしはできない」と思い込んでいたのですね。
彼女の暮らしは、自分に本当に合うものを、楽しみながらきちんとメンテナンスをして、最後までとことん使いきる暮らしです。
「ものを『使いきる』って、つまり、そのものを愛することなんだな、って思う。」
という言葉は、ものを超えて、家族や地球に向けられた、深い愛情のように聞こえました。
すべてを、使いきる
有元さんが使いきるのは、ものだけではなく、自分自身も同じです。
ものを買うことでも、ものを捨てることでもなく、自分の頭や体や時間を充分に「使いきる」ことで、暮らしは快適に豊かになるのだと思います。
(中略)
自分もそうです。自分自身も使いきりたい。
「充分使ったから、もういいや」とまわりにも思ってもらいたいし、自分自身も「充分に使いきった。はい、さようなら」と思える人生が理想です。
そのためには、ちゃんと食べて、ちゃんと動いて、健康でいなければなりません。
料理も家事も人生も大事なことは一緒。要は自分を使いきることです。
すべてがつながって、流れていく暮らし。
それは人生そのものだと思います。
「暮らす」って、「生きる」ことなんだなあと、気づかせてくれた1冊でした。